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歯科インプラント治療の今後

〈インプラント治療の今後〉

インプラント治療の今後

今現在、インプラントと骨とのインテグレーションに疑いを持つことはなくなりました。オステオインテグレートのサクセスレートは99%くらいであるといえます。約3000本のインプラント施術を経験させていただいた私でも30本もロストはなかったはずです。もちろん生体への施しですから、100%でもありません。
今後の技術的な流れとしては、デジタル化が進行してくると考えます。Cad/Camや3Dプリンターなどの進歩と、デジタルダイアグノーシス(診断)が進歩し、より安全に、簡便にシステム化していくことでしょう。どういうことかというと、人間のテクニカルエラーが減少します。最初の頃は機材の導入などで、かえって高額になるかもしれませんが、技術がいきわたるほどに費用も安定し、今まで以上に成功率の高い、安全な治療法となることでしょう。それと等しく、かみ合わせや審美観からのトップダウントリートメント(高いゴール設定からの治療計画)が実現できるため、より永く美しい仕上がりになるはずです。
また、老年歯科医学会でも話題になり始めているようですが、口腔の崩壊(オーラルフレイル)がサルコペニアやロコモティブシンドロームを誘発し、フレイル(筋肉や心身の活力が低下すること)に至る道筋が考えられています。健康長寿に咀嚼が大いに関わるのであれば、今後インプラントは多くの方を救うものとして期待できますね。「咀嚼(ソシャク)」と痴呆症の関係も明らかになってきていますので、噛み合わせを維持するための選択肢としての存在意義も益々大きくなることでしょう。。

最後に私なりに少し問題点も指摘しておきましょう。今後確実に迎えるであろう超高齢化時代にとって、介護や介助者への負担という問題は必ず出てきます。インプラントをお受けになる患者さま方の多くは健康な方々です。しかし時間の経過とともに、その健康なはずの患者さまもどなたかのお世話になることも考えなければなりません。現在介護の現場でのインプラントは、口腔ケアの複雑化を呈し、管理ができないという事例も多く報告され始めました。例えば、周りの既存歯は年齢なりにすべて動揺し、あるいは抜け落ちたにもかかわらず、インプラントの歯だけ歯茎から突出していたら逆に不自由であり、インプラント部がかえって不潔域になり誤嚥性肺炎などのリスクも増してしまいます。インプラントによる固定式の義歯やブリッジもしかりです。他の人によるケアが必要になった時、インプラントを口腔から撤去したほうが良い状況はたくさん考えられます。しかし、その健康状態で再び大きな外科処置は出来ません。簡単な処置で顎骨から撤去出来うるインプラントの開発も必要と思われます。過去にはインプラントフィクスチャーはなるべく太いもの長いものを植立することが将来有利と判断なされていました。現状では、より小さな(必要な強度を保てる範囲の細く短い)インプラントフィクスチャーを使用するという計画が望ましいものと考えます。我々歯科医は次々に世に出る新しいテクニックや器材に飛びつく前に中長期的な展望に立ち、ベネフィットとリスクを鑑みる時に来ています。

長文お付き合いありがとうございました。(23,Mar. 2015 Koji Henry Yamauchi)

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